柴田:さてさて、再び登場、映画の父と言われるグリフィス監督。 リリアンギッシュ主演作品であります『東への道』です。 岡崎:大体柴田さんの興味ある監督が限られてきましたね。 柴田:やっぱね、私なんかが『マトリックス』の感想をネットに乗っけてもしょうがないと思うんですね。 わたし、映画好きと違うかったんですよ、長年。 20歳ごろまで人生で5本くらいしか映画見たことなかったんですよ。 それからもデートで『ジェラシックパーク』とか見に行ってもポカーンとしてね、 特には興味なかったんですよ。映画好きの気持ちが分からんかったです。 岡崎:ふんふん。 柴田:でもモノクロ映画で今にも残ってる、人の佇まいを描いている名作の完成度の高さに惹かれたんです。 岡崎:ふんふん。 柴田:しかし名作といわれたってグリフィスなんて普通知らんでしょ? 『東への道』ってタイトルをレンタルビデオ屋で見かけても素通りされてしまいそうでしょ? 岡崎:全くだ!予備知識無しじゃなかなか借りないっす。 柴田:・・・だから・・・名作だから・・・見てね。
『東への道』 監督:D・W・グリフィス 出演:リリアン・ギッシュ 他 1920年
貧しい娘アンナ(リリアンギッシュ)は金持ちの色男に偽の結婚式をされ、捨てられ、 未婚で子どもを生むがその子も病死してしまう。 クリスチャン一家の家でメイドとして働かせてもらい、その家の息子に合いの告白をされるが、 ある日その家に自分を捨てた色男が客としてやってきた。 周囲に過去が知れるといけないからアンナに村から出て行くように男は言う。 が、とうとうおしゃべりな近所のオバサンによってアンナの過去がバレる。 クリスチャンの家族には未婚の出産が許せず、アンナは追い出される。 吹雪の中、流氷の上に倒れて流されるアンナを、アンナに恋するクリスチャン家の息子が 必死で救ってふたりはめでたく結婚。
岡崎:・・・は〜。最後がハッピーエンドに終わってよかったっすよ。 柴田:もう、絵に書いたような不幸な娘のお話でしたからね。 悲劇のヒロインが似合うんだわ、リリアンギッシュは。 岡崎:以前見た『散り行く花』は、見終わった後もどんよりしてしまいましたからね。 柴田:アンナが流氷の上に乗って流されるシーンは、 ほんとに冬の流氷にリリアンギッシュ本人が乗っかって撮影したという有名なシーンですって。 スタントを立てないで演じる女優魂を感じるエピソードですね。 死ぬ思いをしたというくらい寒かったらしいです。 岡崎:リリアンギッシュの映画を見てると、アメリカ映画なんだけど むしろ日本的な「耐え忍ぶ」世界ってのを感じた。「おしん」のような、ね。 柴田:ああ、そうねぇ。人種とか階級とか宗教とか、 いろいろ受け入れ難いものの多かった時代の映画やね。 岡崎:女も非力で虐げられるものとしての歴史があるものね。 柴田:リリアンの純粋で無垢な佇まいが悲劇にピッタリで見るものに救いを与えているね。 まーあ、とりあえずハッピーエンドでよかったね。このラストがある分、私は『散り行く花』より救われたな。
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