柴田:今日は洋画です。映画の父といわれているグリフィス監督の『散りゆく花』を観ます。
岡崎:え!これサイレント映画やって!私せっかくテレビにスピーカーつないで準備万端待ってたのに!
柴田:ほーご苦労さん。でもなんや、テレビとビデオデッキとスピーカ右左とスイッチ 入れなあかんようになってるやん。めんどくさいわ。 だいたいテレビ画面めっちゃちっさいわ。何とかならんか。プロジェクター導入してよ。
岡崎:無理っす。
柴田:寄付を募ってさ。ネットに振込口座書いとくねん。
岡崎:そんなんに振り込んでくれる奇特な金持ちおらんでしょう。 それに部屋も狭いのにプロジェクターって・・・。
柴田:ちぇ。せめて映画館気分を盛り上げるために、私、ポップコーンを買ってまいりましたよ。 サイレント映画なので音は気にならないはずです。食べながら観ましょう観ましょう。
『散りゆく花』 監督:D・W・グリフィス 出演:リリアン・ギッシュ 1919年
元ボクサーの父親と貧しく暮すルーシーは父に虐げられる生活を続けていたため、 いつもびくびくして笑顔を見せられない。 あるとき父親から逃れて家を飛び出し、中国から来た青年チャンに優しくされる。 しかし娘が中国人と親しくしているのを嫌った父親はルーシーを鞭打つ。 指で口角を持ち上げて何とか微笑もうとしながらルーシーは死んでしまう・・・
柴田:・・・とてもポップコーンをほおばりながら見られる映画ではありませんでした・・・
岡崎:そうでしたね・・・柴田さん固まってましたからね・・・
柴田:めちゃ怖かった。おびえるリリアンギッシュの異様なまでの怖がり方が!
岡崎:目がね、オドオドしてて・・・迫力満点ですなぁ。
柴田:もう全身でこわがってるやん。歩き方もお婆さんみたいやったで。 演技じゃなくてそういう人なのかと思えるくらいトラウマを抱えた雰囲気が出てたで。
岡崎:これ、モノクロ・サイレントで良かったですよ。殴る音や泣き叫ぶ声が入ってたら とても直視できたもんじゃなかったでしょうね。
柴田:いやー、カラーやったらきついで。血ぃタラ〜とか嫌やったで。 白黒やったからリリアンの薄幸の表情が可憐で涙を誘うね。 中国の青年もアヘンでヘロヘロになってたけど、美しかったね。
岡崎:ええ。とてもアジアンには見えませんでしたけど。
柴田:微笑まれへんっていうのはなんかドキッとするね。境遇がにじみ出てて。
岡崎:最近感情を表に出さへん人が増えてるっていうじゃないですか。 泣きたいのに泣くのこらえたりとか。あかんね。もう泣きたいときにはバーっといっとかないと こわばった無表情になってしまうってことですね。
柴田:しかし微笑めないリリアンでしたけれど、指で口の端っこ持ち上げて懸命に微笑もうとする いじらしさに、この主人公の少女の心優しさがでてて、なんとも切ないラストでしたなぁ。
岡崎:リリアンいっこも笑わなかったですけどやっぱり可愛らしかったですもんね。
柴田:愛される薄幸の美少女です。淀川長治さんもリリアンギッシュのファンだったんだって。
岡崎:薄幸って日本人受けしそうですもんね。ちょっと演歌の世界のような哀愁がありましたね。 確かに良かったですけど、ま、グリフィス監督の作品は立て続けには観られないかな・・と。
柴田:たしかに、ちょっと見る側の体調のいい日に見た方がいいでしょうね。 人生に打ちのめされないように。
|