柴田:長かった野球の日本シリーズも終わりましたので、映画上映を行いたいと思います。 ・・・阪神、残念でした・・・本当に夢をありがとう・・・ そんな思いをぶっとばして元気に参りたいと思います。
岡崎:・・・はぁ、さいですか。
柴田:野球の世界は勝った負けたの真剣勝負の中に感動的なドラマが生まれますが、 映画の中にはばた別種の感動があります!男女の仲は勝ち負けじゃあない!!! 今日はそんな、成瀬巳喜男監督の『浮雲』を持ってきました!いやあ、 普通のレンタル屋じゃあ、成瀬巳喜男は置いてませんものね。 さすが「ふや町映画タウン」です!!!
岡崎:・・・はぁ、そうっすか。
柴田:あんたね、これはかの小津安二郎監督も一目おいて 主演のでこちゃんに賞賛の手紙を送ったほどの名作よ!? もっと期待してもいいんちゃうん??!!!
岡崎:・・・期待、してますよ。わたしの心を癒してくれる映画を・・・
柴田:・・・あなた、失恋しましたね。
岡崎:その話には触れないでください・・・さあ、始めましょう。
『浮雲』 監督:成瀬巳喜男 出演:高峰秀子・森雅之 他 1955年
戦争中、仕事で派遣されたインドシナで愛し合ったゆき子(高峰秀子)と富岡(森雅之)。
日本に帰ったら結婚しようと約束していたが、いざ戦争が終わってみると富岡は妻と別れる気配を見せない。 それどころか温泉宿の奥さんやバーの女の子に手を出して、 富岡の周りに女の気配が次々現れる。 ゆき子は富岡が好きだけどその自堕落さに嫌気がさしたり自分の生活のこともあって、 一時外国人のオンリーになったりもする。 でも二人はくっついて、でまた富岡は温泉宿の奥さんと同棲したりして、 ゆき子も宗教で儲けている義兄に囲われたりして、 くっついて離れてという別れ切れない腐れ縁の二人。でもようやくくっついて、 二人で屋久島で平和に暮らそうとしたときにゆき子が病気して死んでしまう。
柴田:・・・・・・・どろどろしてました。
岡崎:・・・・・・・どうして!!!どうして男ってそうなの!!!???すぐ女に手ぇだすの!!!???
柴田:うーん。森雅之の役は太宰治みたいやと思った。わたしの中で太宰治のイメージはこんな感じですよ。
女にだらしないけど憎らしいけど突き放せない。弱さを見せてくるような。女からみるとずるい感じ。
岡崎:嫌やわぁ、嫌やわぁ、恋愛ってこうなん?嫌やわぁ、苦労するわぁ、もっと楽に幸せになればいいやん。
柴田:理性の部分じゃない男女の関係ですからね。 愛とか恋の美しい夢の部分はふたりの恋の始まりの 最初のインドシナのシーンだけで終わってますよね。 そのシーンの高峰秀子はめっちゃ美しく輝いていたなあ。 もう後は現実的な、生活とかお金とかグチや殺人事件まで起こっちゃうという。 役者、よかったわぁ。森雅之の不甲斐なくて母性本能をくすぐるモテ男ぶりもすごいし、 けっして悲劇のヒロインぶらないたくましい女の高峰秀子の感じもよかったよ。 どっちもどっちというか、どっちが悪いとかない感じが二人の仲をどうしようもないものにしている という印象にしてた。ラストの高峰秀子の死に様はめっちゃ綺麗やった。
岡崎:つらいわぁ、わたし・・・もっと責任感ある人と結ばれたいわぁ。 こんな運命?宿命?何か分からんけどとにかくこんな縁にふりまわされるの、嫌やわぁ。 死んでから男に泣かれても困るわ。生前もっと大事にしてもらわな。
柴田:まあ、まあ、落ち着け。
岡崎:あかん!こんなん。もっとしっかり恋愛相手見つけよう。 誠実で責任感あってお金もあって浮気はしない人!!!
柴田:・・・あ〜、そうやって冷静に相手を選べるようならそれは苦労無いけどさ。 月並みな言葉ですが、理性じゃないよね。選ぶのは。「どうしようもない」感じで。 男女が寄り添って生きるって、婚姻届に判を押して終わりってもんじゃないのね。 どうしようもないところで一緒にいるっていうのが深いって感じがしました。 うーん。ほんと、だからあなたがモヤモヤした気持ちでこの映画を見たのも分かりますが・・・ なんか今日は傷心に油を注いだみたいやなぁ・・・・
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