柴田:なんか・・・・忙しくてねー。
岡崎:あ、そうなん?
柴田:忙しなると映画熱が復活するねー。
岡崎:なんでぇ?
柴田:欲求不満になるんちゃう?
あれもせな、これもせなアカンと思うと頭がいらんことまで考え出して
「明日死ぬとして、まだこの世でやれてないことあるわー」とか思っちゃって
夜中に「死ぬ前にエレカシ聞きなおしとこ」って思って「珍奇男」聞いたり
「あー、死ぬまでに押さえとかなアカン名作があったんちゃうんかな」とか思って焦ってTSUTAYA行ったり。
岡崎:いやいや、死ぬ直前やったらもっとせなあかんことあるんちゃうん?遺書書くとか。
柴田:べつにほんまに死にそうなんちゃうもん。
岡崎:あっそう。なんじゃそら。
柴田:で、今までなんとなく避けていた黒澤作品もみとかなあかんのんちゃうんかと思って。
岡崎:なんで避けてたの?
柴田:だって、有名すぎるねんもん。みんなが良いっていうからなんとなく見てへんかったん。
岡崎:へそまがり!
柴田:いやぁ、挑戦したことはあったんよ。「七人の侍」とか、みんながいいって言うから借りてみて。
でも2回くらい観やんと返しちゃったんよね〜。
音割れてて台詞聞き取られへんで。
「黒澤映画には字幕がいるやろ!」とか思って。
岡崎:ふーん。
柴田:でも、名作は観とかなあかんと素直に思い直しました。
で、名作「天国と地獄」を観る事にします。
『天国と地獄』 監督:黒澤明
出演:三船敏郎 仲代達也 山崎努 香川京子 1963年
製靴会社の専務・権藤(三船)は他の重役と対立していたので
屋敷を抵当に入れて自社株を買い占めようとしていた。
そのとき、自分の息子と間違えて運転主の子どもが誘拐され、
犯人は巨額な身代金を権藤に請求する。
自分の子どもじゃないし、今株を買わねば自分は破滅すると悩む権藤。
でも運転手のため大金を払ってやる。特急こだまから金を投げ捨て、身代金は犯人に渡る。
子どもは無事で、世間は権藤に同情を寄せるが権藤は失脚。
ボロアパートから権藤邸を見つめる青年(山崎)がいた。誘拐犯だ。
刑事(仲代)らの捜査で犯人は捕まる。
死刑判決の出た犯人は権藤との面会を求める。で、面会シーンで終わり。 |
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柴田:なーーーーーーーーーー、ほほほ。すごいかったなぁ。
岡崎:すごいかったですねぇ。
柴田:あの身代金受け渡しのシーンは有名で、
実際にこだまを借り切っての撮影で、ミスは許されへん一発撮りやってんて。
岡崎:めちゃ迫力あったよねぇ。
なんかやることのスケールがでかくて、男らしいわぁ。
その撮影時の迫力が映画の迫力につながってるもんねぇ。
柴田:うん、めっちゃどきどきした。
ソレまでのシーンがずっと1つの部屋での出来事やったんで、
電車のシーンになった途端、時間の流れが早くなってさ。
岡崎:なんやろな、これは。別にストーリーでドキドキするわけちゃうやん?
サスペンス的というでなく、推理もんでもなく。
中盤で犯人が誰かはわかるもんなぁ。
柴田:写真の一つ一つが力強いんやろね。
岡崎:しかし、どっこにも甘いところがない映画でしたね。シビアな。
柴田:ラストの見事さといったら!
岡崎:この犯人には権藤が天国にいるように思えてたんやろ?
おっきい家に住んで、社会的地位もあって。
でも実際には権藤も借金負ったり重役と対立したりしてのほほんとはしてなかったっていう。
柴田:犯行動機は曖昧やし妬みや言うたらそうやろうけど、なんか根深い感じがするなぁ
・・・いやぁ、ラストの山崎さんの凄みが。凄い。
犯人が「親切な気持ちで嘘を言われるより
残酷な気持ちで本当のことを言ってもらったほうがいいなぁ」って言った直後
残酷にも権藤さんとの間にシャッターが下りるラストはもう、秀逸やなぁ。
岡崎:うん。本当のことをいってる映画やなぁ。
柴田:むむう。巨匠ですね。黒澤監督は。
明日死ぬまでに黒澤作品全部観なあかんのとちゃうやろか。
岡崎:えー!黒澤作品っていっぱいあるで!長生きしはったし!
明日までに観るのは無理やで!
柴田:じゃ、私も長生きしてその間には全部観るようにしよう。
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