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1996年5月に岡崎京子氏は交通事故に遭われ、以来療養中とのことです。
本屋で岡崎作品が見つけられない不幸な時代があったため、 たまたま岡崎京子の名を見つけると嬉しがって うっかり持っているマンガを重複して買ってしまったりした。
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手持ちの岡崎作品を、思い入れの順(独断適当)に愛を込めてご紹介。
「pink」 マガジンハウス 1996年発行版 |
「愛」と「資本主義」をめぐる冒険と日常のお話 元々は姉の所有物だった。 表紙が全裸の女の子の絵なので、「おねえちゃんもHなん読むなぁ」と思って手に取った。 初めて読んだ作品なので贔屓目もあるでしょうが、バイブルのように読んだものでした。 「愛」と「資本主義」をめぐる冒険と日常のお話という。この「日常」ってのがポイント。 あとがきにもあるように、非常にゴダールの影響が見られます。 「すべての仕事は売春である」。私もそう思います。 そして手強い「愛」をおそれないユミちゃんの女っぷりに魅せられたのでした。 売春してまでワニを養うのは愛が歪んでいるというようなことも言われているようですが、 マンガを読んでるときはユミちゃんが壊れているっていうはあんまりピンとこなかった。 愛に見返りを求めてないドライ(?っていうのかな?)な感じがイカす〜と思ってた。 愛は「give&give」、惜しみなく与えることだと言ったのは愛の名言師藤堂ナオキ氏であるが ユミちゃんはじめ岡崎京子作品のキャラはみなそれを本能で分かっている感じ。ミーハーだからか。 ユミちゃん(ケイコも)の理屈が通用しないところは女ならすんなり共感できるんじゃなかろうか。 「あたしゆかいになると甘い物食べたくなるのよね〜」とか。 |
「リバーズ・エッジ」 宝島社 1996年発行版 |
平坦な戦場で僕らが生き延びること。 「岡崎京子の代表作はこれやで」と姉に見せてもらった。 岡崎氏は「音楽のようなマンガを描きたい」と言っていたそうだが、氏は映画にも造詣が深かったようで、 映画のような構図、展開が新鮮で、「この人凄い!!」と圧倒された。 「一つの死体が結びつけたせつなくも過激な青春ストーリー」といわれればそうなんだけど。ディープな内容。 みんな人のことは羨ましく思うんだけど、みんなそれぞれ大変で、複雑だなあ、と思った。 でもこれは青春ストーリーだから、最後はみんなバラバラになって「ほっとして」、そこがちょっと救いだ。 単行本についていた帯には「死と暴力と愛」とかかれている。 小説より映像化されていて視覚的に楽しいし、映画よりも暴力や愛が生々しくなく、 「岡崎京子のマンガが凄い!」といわせるにたりる名作でしょう。 |
「東京ガールズブラボー上・下」 JICC出版局 1993年発行版 |
「80年代は何も無かった」でもあたしには・・・・・・ これはたまたま劇団の用事で行った造形大の学祭のフリマで売っていた。 ワオ!岡崎京子だ!と思って飛びついて、売り子のお姉さんに値段を聞いたら 上下セットで600円だった。安い!と小躍りして買ったんだよね。えへへ。お得だったなぁ。 80年代初期にトーキョーで高校生している娘達のお話。 ニューウェーブとかテクノとかYMOとか、お洒落でパンクなこのマンガの世界は、 80年代初期を児童として過ごしていた私にはキラキラみえてなんだか羨ましい。 しかし何時の時代も高校生は大変です。 やりたいようにしようとすると人に迷惑をかけている。 主人公サカエちゃんは日常のマサツを身に受けながら、賢明にあがいてけなげです。 ま、作者の岡崎氏の手にも負えない奔放なキャラクターですが、闘う娘はいじらしい。 バブル期に青春を過ごした人は、こう、エネルギーと高揚感が瞬間的爆発型。 サカエちゃんに恋したのびた君の「君は僕のアーバン・プリミティブ・エンジェルだ!! 僕は君の為なら死ねる!」とかね。 岡崎氏の暴走が冴えていてこのマンガは勢い強くて面白い。 他にも岡崎キャラの面々は「この人に一生ついていこうと思った」とか 好きなものはとことん好きになっちゃう勢いがもの凄いのだ。 |
「くちびるから散弾銃」 講談社コミックス 2003年発行版 |
大人になりたくなかった女のコたちにも年月の波はザンコクにもおしよせる この作品はもともと上下巻本として刊行されていたものがあって、 劇団の後輩の友人という人が持っていて借りて読ませてもらった。 欲しかったんだけど売ってなくてさ、1年以上借りっぱなしにしていて、 泣く泣く返したんだよね・・・。 のちに完成本として1冊にまとめられて広く出回るようになって手に入れたのでした。 上の「東京ガールズブラボー」の登場人物たちのその後、という設定で、 女のコたちの23歳〜のおしゃべりの様子がつづられています。 日本の国旗をハート型にしてショッキングピンクにする案とかは、可愛くっていいなぁ。 完成本には描き下ろしで、彼女達の31歳のときまで描かれています。 まだ31歳でも(ミヤちゃん以外)ギャルでよかった。私も31歳まではまだまだ大丈夫、と勇気が出ます(?) だいたい女が2人で会うとしんみりしたりするんだけど、3人寄れば姦しくなるよね。 (「姦しい」という漢字はよくできてるじゃないか。) |
「危険な二人」 角川書店 1996年発行版 |
女のこの夢はいつも単純 女のこの夢はいつもフクザツ ハデだけどほんとは夢見がちなセイコちゃんと、家庭的そうで男に流されやすいヨウコちゃんの 両極端コンビが愛らしい。 モデルとなったドラマでは桃井かおりさんと竹下恵子さんのコンビだったとか。 どっちも好きな女優さんで、ドラマ見てみたかったなぁ。 岡崎京子マンガのキャラクターの中では、この「危険な二人」のセイコちゃんが一番好きかもしれません。 考えないでも直感的に良いほうを選んで突き進めるゴーカイさが素敵。 全く働くのに向いていない性格とか。素敵。 ヨウコちゃんが妊娠しちゃったときも、さばっと「ママが二人いてもいいじゃん!」とか言っちゃったり、 結婚して離婚して、指輪見て「ケッコンしてよかった」とか思っちゃったり。 「マゴコロ代だしてよ」っていうセリフは言ってみたい。 |
「ハッピィ・ハウス上・下」 主婦と生活社 1997年発行版 |
いくら負けが込んでいても。裸足で歩き出しましょう。 13歳るみちゃんの孤軍奮闘記。 13歳で闘うおませな女のこはかっちょいいです。 自分の居場所の獲得は、働けない中学生にはなかなか大変なことで。 私もよく思ったね、この家は、この机は、このご飯も服も親が買ったもので自分のものではない、とか。 それをまあ、おうちをラブホにして稼いじゃう実行力がかっちょいい。 おうちで一人、リビングで眠るるみちゃん。ドロボーでもヘンタイでも宇宙人でもオバケでもなんでも 誰かきてよとドアに鍵もかけず、 だけどやってきたのは暗闇ばかりって、とってもさみしいシーンです。 |
「ジオラマボーイパノラマガール」 マガジンハウス 2003年発行版 |
僕達の青春は、どこに行ったのだろうか? この漫画は姉が買って持っていたのを友人に貸したら帰ってこなくって、 結局買いなおす憂き目にあったのだった。 普通の処女ハルコが高校中退したケンイチに一目惚れした、というお話。 途中、おばあちゃんの魂がハルコの身体に入ったりとSFチックなお話も入っていて、 私は最近よく、「今の思考回路を維持しながら高校時代くらいに戻れたら、 もっと賢い人生の選択ができたんじゃないか」と思うので、おばあちゃんにやや共感。 あと、ハルコがお家の象印ポットが嫌になるとか、きもちわかりますねぇ。 生活感あふれるものとかヤになる。でも生活してんだからしょうがないっていうの。 生きてりゃ煩雑な出来事がいろいろあって、でも死ぬよりましなことばっかりなので、 ものは考えよう。楽しいこともあるさ。と、思わせてくれる漫画です。 (岡崎氏の描く登場人物達は、たいてい悩んだって結局「まいっか」と楽観的になる。そこが潔い。) 帯には「恋とHと、そしてそれから?」と書かれている。そうそう、それから?があるので青春は大変なのだ。 |
「ROCK」 宝島社 1998年発行版 |
だらしなくいいかげんであるところの人々の愛、その他 これは、今は無き京都・朝日シネマでなんか映画を観た帰り、 同じビル内にあった漫画本屋さんで買ったと記憶している。 ロック(女の子)とアトム(男の子)の愛の物語。 岡崎作品の中ではわりと普通の恋愛関係なふたりで微笑ましい。 貧乏でもアトムと一緒に遊びたいロックと、ロックのために働くアトム。 その愛情表現の違いですれ違っってしまう。 動物は怠け者ばかりあつめると、働き始めるやつが出てきて、 働き者と怠け者の比率はだいたい一定なんだそうだ。 たぶんアトムももとはだらしなくいいかげんなヤツなんだろうけれど、 さらに上をいくロックと結婚してアトムは働き者になった。 しかししかし。金よりおそばにいて欲しいというロックの愛情の方がなんか痛快でいいよ。 本中にはオマケとして「花ことば」が書き添えられていて、キャベツが「利益」って・・・ アネモネが「うすれゆく希望」なんて切ない。 やっぱ薔薇は「愛」ですよね。 |
「女のケモノ道」 文藝春秋 2005年発行版 |
女にとって人生とは?そしてその道とは? 昔、河出書房新社からでていた岡崎京子特集の文藝別冊で この「女のケモノ道」のエッセイが2点ほど出ていて、 「これは!!!面白い!!!女に哲学だ!!!」と衝撃をうけていた。 自分も影響されちゃってネット上で「女のいばら道」なんて命名したコーナーをつくっていたわけだが、 なかなか岡崎氏のように鋭い感じがでなくてねぇ。 このたび「女のケモノ道」が1冊の本にまとめられて出版されたそうな。 これはいろんな女の道をテーマに女の子3人が喋り倒す対談形式と、 岡崎氏の漫画が合わさったエッセイというわけです。 1994年に雑誌に掲載されていたというが、今でも全然内容が古くなっていない! どれも鋭くどっかいいかげんで馬鹿馬鹿しく面白い。 女って欲ばりでミーハーで俗物ですなぁ。 綺麗なものも醜いものもひっくるめて「女道」ですよ。 まだ一読しただけですがこれからもバイブルのように読みます! 女のオタク道について、「己好き」について、 「鏡にうつる自分が好きか、他人の目にうつる自分が好きかのちがいは、でかいぞ」 っちゅうのは、とても納得。 やっぱね、両方のバランスが必要ですな。 女は外から見られること多いし、あんまりナルでも痛々しいしね。 あ、あと、岡崎氏も美輪明宏さんの「紫の履歴書」読んでたんですね。 私も!持ってます!!! (美輪さんの領域になると女の道に限らない性を越えた奥深さがありますなぁ) |
・・・つづく(他作品については気長に更新をお待ちください。)
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