柴田:満を持してこの作品をお届けいたします。 大大大女優マレーネ・ディードリッヒ出演の『嘆きの天使』!!! 英語で言うところの『ブルーエンジェル』というタイトルを 『嘆きの天使』という邦題にしたところが実に、実に趣き深いです。 現代では薄れた良いセンスです。
無名のレビュー・ダンサーに過ぎなかったディードリッヒを発掘したスタンバーグが監督です。
岡崎:ディードリッヒって脚線美で有名なんでしょ?
ビデオ・パッケージを見る限り、結構太めですけど・・・
柴田:脚の太さは関係なし!!!太くたって惜しみなく露出したほうが色っぽいに決まっています。 スタンバーグは何かにつけて彼女の脚を撮影している影響で、 その後、他の監督も彼女を「脚女優」として脚を引き立てる撮影を行ってますね。
当時としては相当な露出度なんでしょう。これは。
岡崎:柴田さんは何かにつけてディードリッヒを一押ししてますもんね。
柴田:ええ。女として彼女の身のこなしから学ぶべきことが多いと思います。 私が「好き」という女性には2通りあって、自分に近しいと感じる「共感」と、
あこがれの念を抱く「尊敬」という意味での「好き」があります。ディードリッヒは明らかに後者です。
岡崎:なるほど。なるほど。
【嘆きの天使】 監督:ジョセフ・フォン・スタンバーグ 出演:マレーネ・ディードリッヒ、エミール・ヤニングス 他 1930年
真面目一筋だった高校教師ラート(エミール・ヤニングス)が
キャバレー「嘆きの天使」の妖艶な踊り子ローラ・ローラ(ディードリッヒ)に一目惚れ。
通いつめてついに彼女と結婚。学校を追われ旅興業の道化役者になってまで彼女について行く。
嘲笑され、ローラにも逃げられ、挙げ句の果てにのたれ死にするという話。
原作者のハインリッヒ・マンはノーベル賞作家のトーマス・マンのお兄さん。
岡崎:はー。ディードリッヒが出てる映画として名高いので主役張ってるのかと思ったら、
先生役の男の人が主役だったんですねぇ。驚きました。
柴田:そうなんです。スタンバーグはやはり主人公に思い入れて映画を撮ったんでしょうね。
だからいっそうディードリッヒの存在感が女神のように魅惑的に印象付けられてるよね。
岡崎:女神!!!???これ、ディードリッヒはめっちゃ悪魔やん!!!
先生の地位も名誉もプライドもずたずたにして捨て去っちゃって・・・。先生かわいそ・・・
柴田:ああ、そうねぇ、悪魔的やねぇ。でもディードリッヒには、 真面目な先生に全てを捨てさせるような魅力があるよね。
なんなんでしょう。この佇まいの説得力は。これだけ熱狂的に男に惚れさせる力。見習いたいです。
岡崎:うーん。恋愛ってやっぱこんなに全身全霊で挑まざるをえないものなの?
もっと楽して恋して幸せにはなれないの?いややわぁ・・・しんどいわあ。
柴田:あんた、成瀬巳喜男の浮雲の時とおんなじこと言ってるで。
岡崎:惚れたもんの弱みかなぁ。こんなに生活がズタボロになっちゃうの。
もっと気楽に、八割がたの気持ちで恋愛してたいわ。
柴田:純粋で不器用な人間はそんなうまいことできませんよ。
岡崎:この、先生役の人の力演が良かったよ。痛いほど気持ちが伝わったよ。
ディードリッヒばっかりじゃなくて、この役者さんも注目されるべきやね。
柴田:いや、エミール・ヤニングスはかなり高い評価を得てるんちゃうんかな。さすがに。 この映画はやっぱりスタンバーグがのちの大女優・ディードリッヒを見出して、 その後のディードリッヒのイメージを確立したというところに大きな価値があるよ。 この映画、ドイツ映画なんですよ。このディードリッヒの強烈な個性をもってして、
スタンバーグとディードリッヒはアメリカへやってくるわけです。ふふふ。
岡崎:・・・なんですか、その笑いは。
柴田:で、2人のアメリカでの第一弾が『モロッコ』ですよ。あー、わたし、この時代にリアルタイムで生きてたら、
このディードリッヒのカッコいい登場に狂気してたやろうなぁ!!!!
岡崎:・・・はいはい。まあ、落ち着け。
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