柴田:本日の上映はサイレント期の大作『グリード』。ビデオも上下巻に分かれてます。
監督が完璧主義者だったらしくって、もともとオリジナルは10時間近くあったところ、 今日は大負けに負けて2時間ちょっとの短縮バージョンでお届けします。
岡崎:10時間?!長っ!
柴田:いやぁ・・・あなたがレンタル費を払ってくれるんで大作を借りてみました。
岡崎:そう、それ問題がありますよ!4.5畳映画館はわたしの部屋を提供してるんですよ! わたしは映画館長なのになんで費用払うの?
柴田:なにをいう!あなた観客じゃないですか。私は上映係なのです。
岡崎:ビデオの再生ボタン押してるだけやん。
柴田:・・・・・・なんか文句おあり?
岡崎:・・・いやぁ・・・でも来るたんびに人ん家のおにぎりせんべい食べなくてもいいじゃないですか・・・
柴田:おにせんは上映係の出張費用です。なんか文句おあり????
岡崎:・・・ないっす。
柴田:はい、いいですね。じゃ観よう。
『グリード
』 監督:エリッヒ・フォン・シュトロハイム 出演:ギブスン・ガウランド 1924年
田舎から出てきた主人公・マックは闇の歯医者の技術を習って開業。 そこに友人・マークスが恋人・トリナの治療を頼む。 トリナに恋したマックはマークスに頼んで譲ってもらい、二人は結婚する。 だがトリナが買っていた宝くじがあたって5000ドル手に入れたからさあ大変。 トリナは堕落しないように5000ドルには手をつけないようにして必至で倹約するようになり、 金をためることが生きがいになる。また、妬んだマークスが、 マックが無免許医である事を密告してマックは職を失う。 マックとトリナは憎み合い、ついにマックは妻が隠していた5000ドルを奪うために トリナを殺して死の谷へ逃亡。マックを追いかけるマークス。 水のない灼熱の谷で二人は5000ドルを奪い合い、マークスを殺した後マックは死を待つのみであった・・・
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柴田:・・・あわわわ。超大作。超名作。 オリジナルから5分の1に縮められたバージョンをみてこんなすごいんやから、 ほんまはどんなんやったんやろう・・・
岡崎:大作大作って言うから歴史物とかかと思ってたら、 登場人物ほぼ3人の夫婦ものなんでびっくりでした。
柴田:胸えぐられません?3人とも愚かなんですけど悪人はでてこないですね。
岡崎:そうですね。トリナは5000ドルで贅沢しないで堅実に生きようとするので、なんて真面目な妻なの! と思ったのに、だんだん金に意地汚くなっちゃって。 でもマックが失業した後、自分で必至で働いて金ためてるから悪いことしてるわけじゃないし。
柴田:マックもトリナにお金をせびり取られてついに堪忍袋の緒がきれて暴力振るっちゃうけど、 トリナ側の視点で撮られたらマックは悪人扱いやったかもしれない。でもそうは撮られてないね。
岡崎:うーん。オリジナルやったらものすごく事細かに表現してたんやろうね。トリナがさあ、 ハンドクリーム塗って手を綺麗にしてる描写がさ、 後に貧困に陥って手をあらしてまで必至に働くシーンに影響してると思わん?
柴田:「5000ドル持ってるのに!」ってね。
岡崎:昔なんやろ、証券会社かなんかのCMで、翼がある人が袋小路に追い詰められて、 八方塞で追っ手に「降参」っていうのあったよね。「翼があるなら空に逃げればいいやん」って。
柴田:あると思えばある、ないと思えばないってことか。般若心経の教えみたいですね。
岡崎:もー。柴田さん趣味が古いねん。なんで趣味が「写経」なん?
柴田:ラストも胸にグンとくる映像でしたね。 自分が殺したマークスの死体と手錠につながれてて動けないってぞっとするね。
岡崎:あと、鳥がね。鳥ね。全編とおして鳥がすごいっすね。この監督うまいっすね。
もう完璧主義の完璧具合に打ちのめされました。でも10時間の映画はやりすぎですね。
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